採用決定率75%を実現した保育士採用ノウハウ集③ 採用体制

採用体制採用

保育士の配置基準は、国が定めた「児童福祉施設最低基準」はもちろん、認可保育所の所在地の自治体各市区町村がこれと異なる配置基準を定めていることが多いです。 特に新規で認可保育園を開園する場合は保育士も含めた配置基準を確実に押さえつつ採用を行っていくことになりますが、保育士の採用が捗らず、開園日が近づくにつれ胃が痛くなっている採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

保育士の採用数を最大化していく為には、生産性の高い採用活動が出来る体制を構築することが必要となります。事業者によって採用に関しての体制は異なっていますが、大きく4つのパターンに分けることが出来ます。 それぞれのパターンごとの特徴と、メリット・デメリットを押さえておくことで採用活動の成否が大きく変わってくることになりますので、一つづつ解説していきます。

1.自園はどのタイプ?採用体制別特徴とメリット・デメリット

私は、保育士に特化した人材サービス「キララサポート」での8年間のコンサルタント経験を通じて様々な保育事業者様の採用支援を行ってきました。その中で見えてきたのは、保育事業者の採用体制は大きく4つに類型化でき、同じタイプの採用体制であれば特徴も課題点もある程度共通しているということでした。

また、事業者間で採用体制について深く立ち入った議論や情報交換を行っているという話もあまり聞いたことが無い為、採用担当の方々には是非参考にしていただければと思います。

それでは、保育士採用のプロセス図に当てはめつつ、各タイプの特徴とメリット・デメリットについて一つ一つ見ていきましょう。

①トップ主導タイプ


・特徴
事業者のトップである理事長・園長や、同族からなる経営陣(副園長・主任・事務長などの役職の場合が多い)が自ら面接に入る。 歴史がある社会福祉法人などの非営利法人や運営園の数が少ない保育事業者に多く見られる体制。

・メリット
決定権者自らが面接に入る場合、採用可否に関しての意思決定スピードが早い。 事業者トップの保育理念や方針をダイレクトに伝えることができるので、求職者の共感を呼ぶことが出来る

・デメリット
一般職員の目線でのヒアリングやトークを展開することに慣れていない場合が多いので、求職者に寄り添った面接実施が難しい。また、経営陣のラインナップが長年変わっていない場合には、自園を客観視することが難しくなっている場合が多いので、自己主導型の面接内容になりがちな側面もあるので、合う求職者と合わない求職者がはっきりしやすい。

②現場兼任タイプ


・特徴
複数園を運営している事業者にて、母集団形成~応募対応は本部の担当者が行い、園現地で面接する際の面接官はその園の園長や主任もしくはSV・エリアMGRなどが担当する。内定連絡以降は再度本部担当者が行う。数十園~百園以上の園を運営している大手事業者に比較的多く見受けられる。

・メリット
面接地まで面接官が都度都度移動する必要がない為、面接日を確定しやすく移動に関わる工数も最小化できる。 面接官が面接実施園の現場の状況を良く知っているので、密度の濃い情報提供と臨場感を持った面接が実施できる。また、一般職員目線でのヒアリング・トークが展開可能なので求職者に寄り添った面接が実施できる傾向がある。

・デメリット
採用に関しての決定権を移譲されていない場合、面接実施~採用可否の決定までのスピードが遅くなる傾向がある。 また、メリット面と諸刃の剣であるが現場寄りの視点になって面接をしてしまうことで事業者としてのマクロな視点でのトークをすることが難しくその園の説明だけに終始してしまいがち。 最後に、面接官のバリエーションが多くなってしまうので、面接官によって実施のクオリティが均一に保てないことと、雇用条件面・労務面など、本来面接時にしっかり説明しておくべき内容が抜けてしまったりすることが多く、面接官の育成が最も難しい

③採用担当専任タイプ(マルチタスク型)


・特徴
本部に採用担当者が1名~複数名配置されている。 母集団形成~内定までの一連のプロセスを複数の担当が一気通貫で進めていく。 運営施設数が1園~30園未満くらいで、園の数が急拡大している事業者によく見受けられる体制。

・メリット
採用業務に専念できるので、人的リソースの集中が可能。フットワークも軽い。 マルチタスクで各プロセスの業務経験を積んでいくことが出来るので、チーム内で急な欠員が出た場合や一時的に手が足りない状態になった際も各自でフォローアップが可能。 業務を引き継ぐ必要が無いので、情報共有不足・連携不足からくるエラーなどが出づらい。

・デメリット
採用に関しての決定権を移譲されていない場合、面接実施~採用可否の決定までのスピードが遅くなる傾向がある。 園の現場で面接を行う事業者の場合は、担当者が各園に飛び回り面接をこなさなければならないので、移動に関わる工数が多くなる。 一通りの業務を習得できるまである程度の期間が必要なので、採用チーム内の担当者が定着していない場合、チーム員の育成に時間が掛かってしまう。人員を増やすことが難しい。

④採用担当専任タイプ(機能分化型)


・特徴
本部に採用担当者が複数名配置されており、尚且つ採用プロセス毎に専任の担当制を敷いている体制。 チーム員の数によっては複数のプロセスを兼任している場合もあり。 4つのタイプの中では最も導入している事業者が少ない体制と言える。

・メリット
採用業務に専念できるので、人的リソースの集中が可能。フットワークも軽い。 その上、プロセス毎に分業制を取っているので、各担当者の生産性とスキル向上を図りやすい。 Webサイトの改修・Webマーケティングツールや採用業務支援システム(ATS)を導入することで高いパフォーマンスを出しやすくなる。※他のタイプではその分野のスペシャリストが居ないので、システム導入に時間が掛かったり導入しても使いこなせないことが多い。

・デメリット
採用に関しての決定権を移譲されていない場合、採用に関しての企画や予算取り、面接後の採用可否の判断スピードなどが遅くなる傾向がある。 各セクションの専任が1名づつの場合、急な欠員が発生した際に業務面のカバーが出来ないリスクがあるので、1名は全てのセクションにある程度習熟している担当者の配置が必須となる。 リレー方式の業務スタイルになるので、セクション間の情報共有やチームワークの醸成が難しい。

以上が採用体制の4つのタイプです。ここで大切になってくることは、どのタイプが一番優れているのか?は事業者によってマチマチということです。尚且つ、どのタイプを選択したとしても上記に記載したメリット・デメリットをしっかりと抑え、強みはより強くし弱みは克服するための対策を施す必要があるという事です。

特にパターン3の「採用担当専任タイプ(マルチタスク型)」の体制の場合ですが、園数を拡大している事業者の採用チームで良く見受けられるリスクとして、担当者に掛かる業務範囲と量が急激に増えることから、キャパオーバーになってしまい、各プロセスの業務クオリティが下がってしまいがちです。その結果として、採用の進捗が悪くなりますが、担当者が忙しすぎて改善策や新たな打ち手を講じる暇もない為負のスパイラルがどんどん進んでいってしまうことがあります。

⑤雲母保育園採用グループの採用体制は?

参考までに、当社の場合はもともとは「③採用担当専任タイプ(マルチタスク型)」の少数精鋭部隊で保育士採用を行っておりましたが、新規開園スピードが加速したことによる採用必要数の増加に伴い私が採用責任者としてアサインしたタイミングで「④採用担当専任タイプ(機能分化型)」に体制を変更しました。

また、デメリットである意思決定スピードの遅さを克服するために、採用活動に関わる多くの意思決定の権限を私に移譲してもらいました。特に、面接後の採用可否判断に関しましては余程迷ったり条件付きの採用の場合以外は私から現地で面接する面接官に更に判断の権限を移譲しています。

よって、当社の採用面接後の結果は当日~遅くとも翌日中には連絡が出来る体制が構築できており、採用スピードアップにつながっています。(求職者の気持ちの温度感が高いうちに、こちらからラブコールを送ることはとても重要です)

私がチームの体制構築を考えた際に機能分化型を選択した理由としては、まず採用必要数が多い為「① トップ主導タイプ」は選択できません。また、新園の比率が高いことから「② 現場兼任タイプ」を選択するほど各園の施設長が面接慣れしておらず、面接官のクオリティを上げていく時間がない為必然的に採用担当専任タイプを選択することとなります。

加えて、当社の課題感として人材会社への依存率が高く、採用費が高騰しているという大きな問題がありましたので、マルチタスク型の体制では問題解決の為の手段である「ダイレクト採用」の拡大施策が実行できないと判断し、機能分化型のチームビルディングを実行したという経緯です。

2.「内勤リクルーター」という考え方

保育士の獲得競争が過当とも呼べる状況になっている現在、特にWeb上での保育士の応募者の母集団形成に関しては保育士専門の人材紹介・人材派遣会社の集客力は絶大ですので、各事業者本当に頼りにしているものと思いますし、当社も内定者の多くは人材紹介経由という状態が長らく続いておりました。

しかし、採用必要数の分母が多くなってくると、紹介会社に支払う成功報酬の額もどんどん高くなってきますので、採用すればするほど事業者の収益は圧迫され、設備投資や福利厚生など利用者・職員の満足度を高める為の施策に資金的にも意識的にも手が回らない状態になりかねません。

そこで重要となってくるのが、事業者が直接求職者の応募を獲得する「ダイレクト採用」を強化することです。ダイレクト採用の強化に関して私が提言したいことは、「内勤リクルーター」の概念を理解し、実践することです。

<内勤リクルーターの特徴>

・基本的に内勤常駐で、応募者や人材会社からの問い合わせには迅速に対応し、その他の主にWeb上での母集団形成の施策を継続的に実行し、数値的な結果を検証しながらPDCAを回し続ける。

・マーケティング的な発想・数値を根拠にした仮設建てなど、論理的な思考力に加えて、応募者・紹介会社との電話・メールでのやりとり時のコミュニケーション能力も必要。

 

保育士採用必要数が少なくとも30名~50名を超える事業者さまにまずご検討いただきたいのは内勤リクルーターの配置です。

採用プロセスの内、「母集団形成」と「応募」のプロセスを担う専門スタッフを「内勤リクルーター」、「面接」や「会社説明会」などを実施するプロフェッショナルを「リクルーター」と役割を明確に分け、内勤リクルーターはWeb・SNS・アナログ手法全てを駆使して保育士の母集団を形成し、応募者とのコミュニケーションを通じて面接設定までのプロセスを迅速かつ精度高く行うという体制を構築することを私はお勧めしています。

私は上記に述べたような体制構築の概念を正しく理解し、内勤リクルーターの配置と育成を行っていくことがダイレクト採用を加速できる手段であると確信しています。

事実、手前味噌ではありますが当社の雲母保育園採用グループには優秀な内勤リクルーターが3名配置できている為、ダイレクト採用経由での内定者をこの1年で急増させることが出来ております。

3.最後に

どのようにして保育士採用を成功させるか?を考える為には、現状の採用体制がどのタイプに属するのかを類型化し、タイプごとのメリット・デメリットを押さえた上でまずは課題点を明確にすることから始めましょう。

課題点が明確になれば、後はギャップを埋めていくための改善策を考案し実行あるのみですが、特に気を付けていきたいのは採用に関わる部署の人員の定着と育成だと私は考えます。
チーム員一人一人が自分の所属する部署にどのような形で関わっていき、貢献できているのか? 将来的にどのような成長曲線を描いていくことが出来るのか?

それらを明確に提示できるようなチームビルディングを目指して行かない限り、メンバーにやりがいと帰属心を感じてもらうことは難しい時代です。

そのような意味でも、各セクションのスペシャリストを目指す機能分化型のチーム体制で、内勤リクルーターを配置し育成していくことは非常に意義があることだと確信しております。 皆さんの今後の保育士採用が成功につながりますように、ご参考になれば幸いです。